きほんブルックリン

2019年日本への本帰国を目指しながら、大好きなブルックリンのこと日々の生活を徒然。

La Traviata(椿姫)@Metropolitan Opera Dec 11

今シーズン初めてのMETオペラに行って参りました~!

演目はみんな大好きLa Traviata a.k.a 椿姫です。
Verdiの代表作のひとつで、有名なアリア『ああ、そは彼のひとか』(この邦題絶対おかしいですよね)や合唱曲『乾杯の歌』などの名曲が1作品につまっており、1幕から3幕がサクサク進んでテンポが良いので話もとても分かりやすく(これ大事)、悪いとこナシ!な、まさにVerdiオペラ至上の傑作!と言っても過言ではないオペラと個人的には思っております。


Conductorは今年から新しく音楽監督に就任したYannick nezet-Seguin氏で、主要キャストは下記のとおり

Violetta: Diana Damrau
Alfredo: Juan Diego Florez
Germont:Quinn Kelsey

 

ちょっとオペラ好きな人ならこの3名だけでキャストの凄さがわかるであろう・・・!
そう、オペラファンからするとヨダレもんのキャスト。

細かい技術で魅せるフローレス

まずは今回の公演より、上記の動画を見ていただきたい。

こんなに動き回りながらアジリタを軽々とこなしていって、最後には見事なhigh Cのホールドですよ。あっぱれすぎませんか?
そう、フローレスもダムラウも、これでもかってくらい動きながら、しかもベッドの上で膝ついたりしながらずっと歌ってるんです。

この人たちバケモンだな・・・って思わされましたよ、えぇ・・・。たぶん声を転がすとか、もはや転がしてる感覚も無くて、彼らにとっては普通のことなんだろうねっていう・・・

昨今のMETの歌手って「でっかい声で歌っておきゃいいっしょ!」みたいな発声法で、ぐわあっと声開けながら歌う人がとにかく多くて、私は割とウンザリだったんですけど(どうもロシア系歌手がその傾向が多いと思われる・・・)、その点フローレスのとにかく繊細なこと~(ほれぼれ)
たしかに声は小さい方ですが、それでも丁寧に音と、そして言葉と向き合って歌ってくれているのが本当に素晴らしい、大好きです。さすがロッシーニ歌いですよね!まさにベルカント唱法の歌い手さんなんだな~って感じです。


しかも、フローレスって出所が良いのかしら、どことなく漂うちょっと頼りない品の良いぼっちゃん感がアルフレードにピッタリなんですよー!ゴリゴリやエロエロしすぎてないある意味テノールらしくないテノールは最高。

しかし、遠目に見ていると分からなかったんですが、動画で見ると結構老けたなと思って年齢を見るとなんとまだ45歳!!!キャリア長いので、てっきり50代後半くらいは上だったかと思っておりました。成功したの早すぎ~笑 45歳と言ったら歌手として一番油乗ってて良いころじゃないですか?にしても素晴らしいアルフレードでしたので大満足!

ダムラウの演技力に完敗

ダムラウクラスになるとこの曲おそらく何百回も歌っているんでしょう。
朝飯前!って感じで軽ーく完璧にパッセージをこなしていきます。そのなかに入れ込む演技の細かいこと!こうして動画で見てみると目線や動きなど、言葉一つ一つに演技を入れ込んでいることがよくわかりますね。
本当に演技がうまい。表情の作り方は割と現代的だとも思いますが、分かりやすくて良いと思いますし、何より彼女、とってもチャーミングなんです。(死んだり怒ったりしているときは割とドス効いてる系で怖いですけど)世界をまたにかけるディーバであり、貫禄は充分にありますが、要所要所の所作がとっても可愛らしい。
2幕でヴィオレッタが泣いているところを隠しながらアルフレードに『笑っているのよ』って笑顔で取り繕うところなんて、スカートをひらりと翻して笑顔でニッコリと笑ったりして、ちょー可愛い。

こんなに曲を完璧で歌えて、さらにここまでの演技をできるオペラ歌手は世界的に見てもなかなかいないですよ。まさにMETのライブ配信にも対応出来るHD対応歌手と言えるでしょう。

 おとぎ話を見ているかのような新演出

 f:id:msmisty:20181218065019j:plain

色彩がとっても鮮やかな舞台となっております。
19世紀のセットアップでありながら、色味は現代らしさをミックスさせており、上品すぎず、下品すぎず、とても華やかな舞台です。
なかでも、キャストが多く出そろう1幕は、まるでディズニー映画の美女と野獣のようでした。オペラmeetsミュージカル風味って感じです、ニューヨークらしい演出といえばニューヨークらしいのでは。

演出は鬼才マイケル・メイヤー氏。もともとミュージカルの演出家の彼ですが、2012年にRigolettoの演出にてMETデビューを果たした際、Rigolettoの舞台を16世紀のイタリアから、現代のラスベガスへと変化させ、オペラファンの度肝を抜いた彼です。

そんな彼の演出なので、どんな演出になるかと思えば、今回は意外にも割と古典的な演出。拍子抜けと言えば拍子ぬけですが、昨年までMETで公演していた椿姫はウィリーデッカ―氏による現代的な演出(大きな時計が舞台上にあり、非常にシンプルかつ画期的な演出だった。通称"Clock”)だったため、あまり奇をてらった演出のものは続けて出来ないという背景はあるのではないかと推測します。

f:id:msmisty:20181220062338j:plain

ただ、気になったことと言えば1幕、2幕、3幕の間、常にベッドが舞台上にあり、パーティーのシーンなどでは、そのベッドをソファーのように使ったりしているのですが、それがどうも不自然で・・・さも普通かのように設置しているのですが、やっぱりそれベッドだよね!?っていうツッコミを入れたくなるって言う笑
ヴィオレッタの病状の深刻さを表したかったのでしょうか・・・ものすごく気になるほどでは無いですが、なぜにオールウェイズベッドon舞台なのかという疑問を抱えずにはいられませんでした・・・

 

さて、べた褒めさせていただきましたダムラウとフローレスによる椿姫。指揮者やダンスなど、まだまだ語り足りないところですが、長くなりすぎてもアレなのでこの辺で。そしてNYの方々、この2人による公演は12月いっぱいはまだあと何公演かあります!急げ!日本の方はMETライブビューイングの上映が全国各地で2019年の2月にあるそうですので、お好きな方は是非。

ヴェルディ《椿姫》 | 演目紹介 | METライブビューイング:オペラ | 松竹